映画の中の花「CITIZENs ~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」続き
皆様、こんにちは!(^^)!関東地方では残暑の厳しい日が続いておりますね。2025年8月15日は戦後80年の終戦記念日だったので、テレビのニュース番組や各メディアで戦争をテーマにした内容をご覧になることも多かったのではないでしょうか?
現在 「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs ~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」 2本の短編映画は、高円寺のシアターバッカス様にて、「昭和100年・終戦80年平和映画特集」に選出され、上映されております。ぜひ映画館でご覧いただけましたら幸いです。
そして、Honey Roasted Chicken」がマドリード国際映画祭に4部門ノミネートされましたことをここにご報告させていただきます。来月になるとご報告できることもございますので、ぜひお楽しみにお待ちくださいませ!
前回のブログでは、「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs ~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」の違いについて投稿させていただきました。 2つの映画の決定的な違いとは、背景としての主張しすぎない花と、主張を伴う花、花や植物の総量という点です。 花とは一言では言い表せないほどの奥深さのがあるものです。私たちは花と植物を通じて、表現の可能性を常に模索しています。
さて、今回のブログでは、「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」の花に関する共通点、 1回目のロケハンの様子や群馬県知事と前橋市長への表敬訪問について 、「Honey Roasted Chicken」から着想を得て弊社所属現代アーティストが描いた絵について語っていきたいと思います。

1.「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」花に関する共通点
2.群馬県へのロケハン同行
3.絵画「桃源郷 UtopiaⅠⅡ」
3-1.岩絵具という時間の粒子
3-2.美しい瞬間が、ただそこにある
3-3.戦後80年、沖縄に思いを馳せて
1.「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」花に関する共通点
映画やCMの撮影の場合、通常花屋さんは事前打合せのもとに当日施工を行う、もしくは事前に制作したものを納品するという形で作品に関わっています。制作物の管理は美術スタッフさんにお願いし、撤去の際に再度現場にお伺いすることが通常です。
しかしながら、弊社アーティストチームは、この2作品については、「Honey Roasted Chicken」は当日現場に同席し、「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」は3回に及ぶロケハンに同行させていただきました。 ロケハンに同行した理由は、監督と施工箇所を綿密に打ち合わせをしたかったことと、環境を適切に把握し花選びとデザインを決めたかったからです。
群馬県前橋市は、雄大な自然を抱く赤城山のふもとに位置し、緑豊かな田園地帯や山間のアウトドアスポットが広がる県庁所在地です。群馬県前橋市と言えば、関東地方の中でも「体温越え」の猛暑日が全国1位というニュースを耳にしたことがあるかもしれません。
前回のブログでもお伝えした通り、戸外での撮影は環境のコンディションに左右される、とてもデリケートなものです。撮影時期は10月とはいえ、群馬県前橋市は関東一の暑さを誇るエリア。ロケ地である林牧場様の環境を正確に把握しておくことが美しい装花をするうえで必要不可欠だったのです。
ロケハン1回目の段階では、撮影期間は当初4日間を予定していました。弊社は都内で切花や観葉植物の仕入をしているため、撮影中、場合によっては一度ロケ地から東京に戻って仕入れをし、水揚げをした状態で再びロケ地へ合流するということも想定していました。
この映画の撮影に対するあらゆる可能性を推考し、課題点をあぶり出し、1件1件検証を行いながら準備を進めていったのです。
この2つの映画はテーマが共通しており、「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」には、「Honey Roasted Chicken」を想わせるシーンが登場します。
それぞれ異なった花の演出になっているものの、両方の映画に使われた花があります。1つはデルフィニウムという青いお花です。
前回のブログでもお伝えした通り、青という色の持つ視覚的効果を利用するためこの花は2つの映画ともに登場します。
デルフィニウムの名前は、つぼみの形がイルカに似ていることに由来するギリシャ語の「delphis(デルフィス)」からきています。 結婚式で花嫁が身に着けるものの一つ、サムシングブルーとしても人気があります。
デルフィニウム全般の花言葉には「清明」と「寛大」があります。豊富な花付きや広い青空のようなブルーの色合いにマッチした花言葉です。 青色のデルフィニウムは「あなたを幸せにします」という意味があり、パールブルーのデルフィニウムは「澄んだ瞳」、マリンブルーのデルフィニウムは「壮大な心」「皆があなたを慰める」という花言葉があります。
青色のデルフィニウムは見た目の美しさだけでなく、花言葉でも人々の心を豊かにしてくれるのです。
自然界には、天然の青い花は少なく、代表的な青い花と言えば、紫陽花、デルフィ二ウム、エリンジューム、ルリタマアザミ・ベッチーズブルー・ブルースター、ニゲラ、矢車ギクです。
青いバラは有名ではありますが、青いバラは天然の青ではなく、染めたものが一般的に流通しています。青いバラと名付けられた天然のバラは、どちらかというと紫色なのです。
視覚的効果を踏まえ、私がイメージする青の色合いにもっともマッチしたものがデルフィニウムでした。そのため、デルフィ二ウムは2つの映画どちらともに使われているのです。 デルフィニウムの透き通るような青はこの映画の「市民のための映画」 という純粋なメッセージのシンボルでもあるのです。

もう一種類、2つの映画に登場するのはダリアというお花です。ダリアの花は華麗で存在感があり、空間にダリアの花があるだけで気品があり、華麗な印象を与えます。 ダリアは、メキシコからグアテマラにかけての南米を原産とする植物で、15世紀頃には既に当時のアステカ帝国で「神聖な花」として大切にされました。18世紀末にスペインを通じてヨーロッパに伝わると、ヨーロッパ各国でも「花の女王」として愛され、日本にはオランダを通じて19世紀半ばにもたらされました。ダリアはナポレオンの1人目の妃だったジョセフィーヌ・ド・ボアルネがバラとともに特に愛した花とも言われています。 ジョセフィーヌは、庭で数多くのダリアを育てたと言われていますが、豪奢な庭園のなかでもとりわけ目を引き、見分けることのない多彩な美しさだったことでしょう。 ジョセフィーヌのダリアへの寵愛ぶりは、その美しさに「ダリアの球根を分けてほしい」と頼んんだとある貴族の頼みを断って独占しようとしたゆえに、庭師を通じて球根が盗まれるということが起こりました。 ジョセフィーヌは激怒のあまりその貴族を追放してしまったほどだと言い伝えられています。 ダリアは世界中で盛んに品種改良が行われ、花のサイズや咲き方も多彩で、色合いも幅広く、園芸種として作られたダリアの品種は約3万種とも言われています。 ダリアの花は、赤・ピンク・黄色・オレンジ・白・紫・複色など、花色が豊富で、他の花と並んでもとりわけ目を引き、見飽きることのない多彩な美しさを持っているのです。 ダリアには、「エレガント」、「優美」、「希望」、「清々しい美しさ」という花言葉があります。 ダリアは鑑賞者の視線を集めやすく、場の雰囲気作りをしてくれる存在なのです。 その場の空間までも明るく彩るダリアの凜とした美しさには、この映画のテーマである平和と調和の世界に向けた「希望」のメッセージを込めたのです。
2.群馬県へのロケハン同行
最初のロケハンは2024年の7月下旬に、ふるいちやすし監督とエグゼクティブプロデューサーの河本和真さん、プロデューサーの小林由佳さん、私の4人で群馬県前橋市の林牧場様へ伺いました。 エグゼクティブプロデューサー、プロデューサー、私の3人が同じ車だったのですが、3人ともに年齢が近いこともあり、車中話が盛り上がり、あっという間に現地に到着したのでした。 群馬県への道中は、それぞれの映画への想いを語ったり、和気藹々としていましたね!
早朝都内を出発し、午後からロケハンがスタートしました。 ロケ地の林牧場本社は、元々旧赤城クローネンベルクドイツ村だったそうで、過去には会田監督のテレビドラマ「相棒season22初回拡大スペシャル!」、映画「グランメゾン・パリ」、「はたらく細胞」の撮影でも使用され、異国情緒漂う雰囲気の場所です。ドイツ風の街並み、広大な草原が魅力的で、どこか懐かしい、のどかな山間の景色が広がっています。 群馬フィルムコミッション様のご協力のもと、とても広い敷地内を効率的に見て回ることができ、どの場所でどのシーンの撮影を行うかをイメージしながらロケハンは進んでいきました。 群馬県赤城山の麓に位置するこの地から、花で彩られた戦車のイメージを膨らませていったのです。

撮影の際には広大な草原に花で彩られた戦車が走りました。
ロケハン後には、群馬県庁に伺い、群馬県知事である山本一太氏と、前橋市長の小川晶氏に表敬訪問をさせていただきました。 山本一太氏はご自身のブログでも私たちの表敬訪問の様子を投稿してくださいました。 群馬県と言えば、言わずと知れた温泉の地でもあり、雄大な山々に囲まれた自然豊かな土地でもあります。 古くから現代に至るまで、多くの芸術家がこの温泉文化や自然の景観に魅了され、数々の作品が生み出されてきたのです。昨今、群馬県では多様性や独自性の象徴であるアートを活用して、他にはない魅力を生み出すことを目的とした「群馬パーセントフォーアート」推進条例が制定され、他県からも注目を集めています。群馬県庁には「群馬県庁アートサイト」があり、このサイトでは公共空間でアーティストが制作や発表を行い、鑑賞者は気に入った作品を購入することができる展覧会が開催されています。群馬県は県自体がアーティスト活動をサポートしているともいえますね。 こうして、群馬フィルムコミッション様をはじめ、群馬県との連携のもと「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」は共創されたのです。

写真右から2人目 ふるいちやすし監督
3.絵画「桃源郷 UtopiaⅠⅡ」
「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」の中には、花だけではなく、花をテーマに描かれた絵が登場します。この絵は 「Honey Roasted Chicken」の背景装花から着想を得てデザインした絵で、「CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」のためだけに描かれました。「Honey Roasted Chicken 」という作品がなければ世の中に生み出されることのなかった絵とも言えます。 花だけではなく絵も協賛しようと思った経緯をお話するととても長くなってしまうので、ここでは割愛しますが(もし、読者の皆様からリクエストがあれば投稿しますね!)、「 CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」 は、 随所に「Honey Roasted Chicken 」 を思わせるシーンを散りばめているのです。
絵を描いた本人、知念岳からのコメントをこちらに掲載したいと思います。
3-1.岩絵の具という時間の粒子
桃源郷(Utopia)に使用したのは、岩絵具という鉱石を砕いてつくられた顔料です。自然そのものの時間を抱えた素材であり、粒子ひとつひとつが光を反射、吸収し、微細な震えと奥行きをもたらします。この絵で描きたかったのは「瞬間の美しさ」でした。それは花が咲くような儚くも尊い時間であり、その繊細さを表現するためには、油絵具やアクリルではなく、岩絵具の持つ深みと静けさが必要でした。
また、岩絵具を水や糊で薄め、あるいは濃く塗り重ねることで空気感や重みを表現できる点は、戦争という激しさの中に潜む哀しみや、微かな希望を描くためにも欠かせませんでした。 私の思う「希望」とは、戦争における勝利や終戦ではなく、極限状態の中でもなお「一人の人間であること」を手放さない心です。たとえば、銃を置くこと、家族の顔を思い出すこと、自分を押し殺すのではなく、痛みと共に生きようとすること。そのような、ささやかだけれど確かに存在する光のようなものを、岩絵具の粒子に見出しました。
3-2.美しい瞬間が、ただそこにある
この2点の絵画は、非戦映画『CITIZENS』のために制作され、劇中にも登場します。ふるいちやすし監督の前作『ハニーローストチキン』に登場する、異なる国の兵士2人が出会うシーン、敵でも味方でもなく、ただ「一人の人間」として、故郷を思い交差する瞬間に現れる桃源郷に着想を得ました。その中で彼らは、銃を構えながらも撃たないという選択をします。恐怖の中で自然と現れる静けさ。善悪といった明快な軸では語れない複雑さが互いに宿り、その一瞬は奇跡のように美しく調和が保たれています。
構図はほぼ同じながら、背景の空気感を真逆に設定しました。一方は水分を多く含んだ淡い描写で穏やかな心情を表し、もう一方は岩絵具を荒く流し込むことで混乱や動揺を描いています。それは、戦争の二面性と兵士たちの心の変化を映し出しています。
劇中『ハニーローストチキン』でも描かれたように、短い時間の中で兵士たちの心は激しく移ろいます。生きるか死ぬかという緊張の中で、家族や愛する人を思い出す余裕すらない。それでもなお、銃口の向こう側にある相手の「背景」を知ることで、人を殺める機械の様な心に人間性を取り戻していく。 その心のゆらぎは、絵の中の岩絵具のにじみや塗り重ねの揺らぎとして表現しています。一見静かな画面の奥に、小さな葛藤や記憶がゆらいでいる。そういった曖昧さの中にこそ、美しい瞬間が宿ると思い描きました。
3-3.戦後80年、沖縄に思いを馳せて
この作品を制作したのは2024年9月、戦後からちょうど80周年を迎える前年のことでした。その節目を目前にして、私は改めて沖縄という故郷に思いを馳せていました。沖縄は、日本という国の一部でありながら、戦争の最前線に立たされ、多くの命が失われた地です。戦後80年を経た今もなお、アメリカ軍基地や記憶、分断の問題に晒され続けています。
それでも、人々は自然を愛し、祈り、日々を営んでいます。どれだけ歴史が風化しても、その営みの中に希望を見出すことができる。だからこそ私にとって「桃源郷」は、逃避としての理想郷ではなく、現実の中にそっと立ち現れる静かな可能性なのです。銃を置く瞬間、互いを理解しようとする眼差し、それらすべてを沖縄の過去と現在に重ねたとき、その姿はとても強く、美しく見えました。
鑑賞者には、この作品を通じて、自らの「桃源郷」とは何かを見出していただけたらと思います。私が提唱したいのは、「桃源郷を定義する」ことではなく、「見つける」こと。誰かに与えられるものではなく、自分の過去や感情、葛藤と向き合う中でふと立ち現れるような、そんな柔かく静かな風景を、この絵を通して感じ取ってもらえたら嬉しいです。


「桃源郷 Utopia ⅠⅡ」は現在、新虎ノ門通りに新しくオープンしたCafe&Bar SHINTORA GARDEN様の2階に飾られています。ぜひ店頭で実物の絵をご覧いただけましたら幸いです。
さて、今回のブログはいかがだったでしょうか?
9月1日は、 CITIZENs~The Choice Not to Fight 戦わないという選択~」 に関するお知らせがございますので、ぜひ弊社のニュース欄も合わせてご覧くださいね!
それでは、また次回のブログでお会いしましょう♪