映画の中の花「Honey Roasted Chicken」

皆様、こんにちは!昨年はほどんど「社長のひとりごと」ブログを更新できず…、楽しみにして下さっていた方本当に申し訳ございません。
昨年1年間の活動は前回の「新年のご挨拶」Blogで触れましたが、映画の中の花「Honey Roasted Chicken」について書いてみます。
昨年施工した順番としては、Flower Art Award 2024での大型作品が先なのですが、今月「CITIZENs」が完成したこともあり、なぜ、映画美術としての花を提供することになったのか?こちらから今回投稿させていただきます。
「Honey Roasted Chicken」と「CITIZENs」の制作にあたっては、いくつもの奇跡のようなストーリーがありました。プロデューサーをはじめ監督との出会い、映画のプロジェクトが発足し、この作品に関わることになった理由、映画の中に花と共に込めた想いについて今回は語っていこうと思います。

1.プロデューサーと監督との出会い
2.「CITIZENs」撮影の延期と「Honey Roasted Chicken」ができるまで
3.「Honey Roasted Chicken」撮影秘話

私が映画プロデューサーと出会ったのは、2023年のことでした。ハワイ在住のお客様からお電話をいただき「今日本にいるのですが、明日一緒に映画を観に行きませんか?」とお誘いをいただきました。お客様でもあり友人でもある彼女から、久しぶりの電話に日程を調整して会いにいきました。そこで出会ったのが今回の映画プロデューサーです。
夕方から別件の打ち合わせが入っていた私は、一緒に映画鑑賞をさせていただいたみなさんとはゆっくりと歓談することは叶わず、映画が始まる前後に少しお話しをさせていただき、その場を後にしました。
2023年はちょうどカンボジアでのイベント装花とデモンストレーションのお仕事が決まっていた時で、「11月にカンボジアに行ってお花を生けるんですよ。」などと近況を含むたわいのない会話をしました。その際、プロデューサーから「今度撮影を予定している映画でお花を使いたいのですが、お願いすることは可能ですか?」というご提案をいただきました。その日はお打ち合わせをする時間が十分なかったともあり、後日彼女と逢うことになったのです。
プロデューサーと改めてお会いし、企画書を拝見しながらどのような映画なのか?という詳細を伺いました。その映画が昨年10月に撮影した「CITIZENs」でした。撮影順は「Honey Roasted Chicken」が4月、「CITIZENs」が10月ですが、実は企画が上がっていたのは「CITIZENs」が先だったのです。「CITIZENs」の脚本と映画の企画書を拝見し、シンプルなストーリながら、今の時代に、そして次の時代への大切なメッセージがたくさん散りばめられている作品だと感じました。この映画を日本から世界へ、メッセージを花とともに届けたい!という想いが強く芽生えた瞬間でした。
当初は戦車の砲身に花をさしていくというシーンの撮影のみお花が使われる予定でした。後日監督ともお会いし、直接お話しを伺った際に私の頭の中では様々なシーンに花の美術がイメージできていました。映画の各シーンごとにどのような花、そして色合わせが最適か、監督とのお話しの中でお花のデザインイメージがより具体的に形になっていきました。

当初2024年4月に撮影を予定していた「CITIZENs」ですが、様々な事情で、撮影が延期となったのです。しかしながら、この撮影延期という出来事が短編映画「Honey Roasted Chicken」の誕生に繋がったのです。監督から、「Honey Roasted Chicken」の花美術のお話しを伺った際に、「CITIZENs」への布石やプロモーションの意味合いとして、短い脚本の中に「CITIZENs」のエッセンスが多く含まれているように感じました。
この時の監督からのオファーは役者たちの背景を花で彩るということでした。10メートル以上の背景をどのようなお花で彩るか、イメージを膨らませながら、私たちは「Honey Roasted Chicken」も映画美術協賛を行うことに決めたのです。
打ち合わせをしながら私の頭の中に降りてきたイメージは、桜の花が満開に咲き誇っている場面でした。「Honey Roasted Chicken」も「CITIZENs」も、どこか特定の国を指すものではありません。しかしながら、日本から世界へメッセージを放つという点はとても重要で、花のデザインを考えるにあたり、意識した部分でもありました。日本らしさ、日本ならではの花とは?推考する中で、桜の花が舞い散る様が思い浮かんだのでした。
映画は監督や助監督をはじめ、キャスト、ヘアメイク、スタイリスト、花以外の美術、照明・音声など、たくさんのチームメイトがお互いに手を取り協力しながら1つの作品を制作していきます。
私たちは監督をはじめ、チームメイトたちと何度も話合いを繰り返しました。「ここでの兵士の心境はどのようなものですか?」、「張り詰めた緊張感の中で家族を思い出す心の余裕はありますか?」など、私たちはこの脚本を読み返し、それぞれの役割を踏まえて話し合い、関係者全員で「Honey Roasted Chicken」を創りあげたのです。
クライアント様からのご依頼による施工や大型作品に慣れている私たちであっても、各チームとの連携を深めながら円滑に施工を進めるという映画撮影は新しい経験となりました。
「Honey Roasted Chicken」の撮影は、山梨県でおこなわれたのですが、ロケハンにいくことができませんでした。事前にお写真で撮影場所を知ることはできたのですが、写真で見る景色と実際の撮影地は違っていました。
この時の反省は次作の「CITIZENs」での美術制作の際に大いに役立つことになるのです。


画像:「Honey Roasted Chicken」オフィシャルポスター
実際には存在しない花の丘を創り上げました。

2024年4月に「Honey Roasted Chicken」は山梨県で撮影されました。深夜に東京を出発し、花チームのスタッフはハイエースで仮眠をとって現地入りしました。6人全員椅子に座ったまま仮眠をとり、現場入りしてくれたスタッフのみんなにはとても寝心地の悪い想いをさせてしまいました。6人仲良くハイエースで仮眠をとったと話をすると、花チームはとても仲がいいとと思われる方も多いでしょう。実際にとても仲が良いと思いますし、私にとっては弊社アーティストチームのコアメンバーは仲間であり同士、家族という表現が一番適切かもしれません。アシスタントとして現場入りしてくれたスタッフたちも私にとってはかけがえのない大切な存在なのです。6名の素晴らしいメンバーのおかげで「Honey Roasted Chicken」の花美術は完成したのです。
数時間の仮眠をとって現場入りしたことろ、ロケ地は事前打合せの際にお写真で拝見していたイメージとは異なり、山を切り出した急斜面だったのです!!撮影地の一番近くまで車で花を運ぶ算段でいましたが、花を積んでいると車は急斜面の坂を降ることができません。花を運ぶときには少しの刺激も命取りになってしまいます。一番撮影地に近い場所まで車で運ぶことは諦めて、平らな私道に車をとめて、荷物を手運びするところからスタートしました。
実際に施工する場所は山道を下り、開けた平場の先にありましたが、なんと急斜面が2面。全ての花材や備品を撮影場所まで運ぶことに相当の労力を必要としたのです。私たち花美術チームは早朝5時半頃現場入りしましたが、荷物を運び終えるまで1時間程度時間を要しました。
これは想定外。ここから一気に施工していきました。

画像:早朝施工作業時の写真
急斜面に花を運び込み、施工をしていきます。

とにかく、一心不乱に仕上げていきました。正直花を生けている時の記憶がありません笑。いつものことですが、気付いたら完成していましたね。
「Honey Roasted Chicken」はロケ地の現調ができなかったため、花材運びの他にも苦労がありました。事前の打ち合わせでは撮影場所は東向きのため、午前中日が当たることは把握していました。逆光になってしまうため撮影は午後からという段取りになっており、施工時間は十分に確保することができていました。しかし環境的コンディションの把握が十分ではありませんでした。
撮影当日はとてもお天気が良く、4月にしてはとても温かい1日でした。そのため、思ったよりも直射日光が鋭く、山から吹き下ろす風が花に当たってしまうのです。予備の花材は一定量持って現場には向かったものの、撮影が始まるまで待機の時間は常に水やり、オアシスが乾いていないか確認し、ジョウロとスプレーで花に水を与え続けたのです。想定外の風と日光に、カットごとにメンテナンスが必須な状況でした。直射日光と風は切花に相当なダメージを与えます。戸外での撮影は環境に左右されるため、撮影場所をより詳細に把握しておく必要があると反省し、次回作「CITIZENs」では必ずロケハンに同行させてくださいとお伝えしました。「CITIZENs」は、戦車の現調1回、ロケハン2回の合計3回行いました。「CITIZENs」ロケハンの様子は次回のブログでお伝えしますね!

画像:映画の背景となる花の丘を施工している様子
八重桜とデルフィニウムのブルー、イエローの花々が朝日とともに美しく光ります。

次回のBlogでは、「Honey Roasted Chicken」映画美術としての花、花に込めたメッセージというテーマで投稿したいと思います。
続編もお楽しみに♪