映画の美術 花を生けてみて考えたこと・感じたこと
皆さまこんにちは、i-florist店舗スタッフの鎌田です!
実は先日行われた映画の撮影に、私も同行しておりました、、、!今回のブログでは、私自身の話をしながら、初めて映画の美術として花を生けてみて感じたことをお伝えしたいと思います!よろしければ最後までお付き合いくださいませ。
1.私が今まで勉強していたこと
2.美術として「花」を用いること
3.映画の美術として花を活けた感想
4.終わりに
1.私が今まで勉強していたこと
i-floristで働き始める前の学生時代、私は空間演出を学んでいました。その中でも特に、舞台などの総合芸術を主に専攻していました。大道具や小道具などの物作りはもちろん、照明や音楽など空間全てのデザインをすることで表現をする、ということしていました。
デザインを学んでいる時は、ただ机に向かってデザインをするだけではなく、デザインしたものを自分で1から作っていました。なので、立体の切り出しや、簡単な図面を書いたり、木材を組み立てて壁を立てたりなど、小型、大型関係なく物作りをしておりました。またそこにどの照明を使い、どのくらいの光を、どの角度で、どのタイミングで照らすのか、など、展示やパフォーマンスにおける演出を学んでおりました。
その過程の中でも、興味を持って取り組んでいたことの一つは映像作品の美術デザインです。映像作品の美術では、簡単に言うと、「どのような人が、どういうことをする場所なのか。どういった意味を持つシーンなのか。」ということを落とし込んだ空間を制作します。よく用いる言葉で言うと「世界観」を作ると言うことです。
学生時代の経験として、映画の美術制作に関わらせていただく機会もいくつかありました。そこでも、壁の質感を出す作業であったり、エイジングと呼ばれる時代に合わせた汚しを既製品につける作業であったりと、世界観を合わせるため、また世界観を作り出すために何かを加工して作るということを主にしておりました!
2.美術として「花」を用いること
作品の中で一般的には花は花として利用することに限られます。その制限があるにも関わらず、さまざまな芸術作品においてモチーフとして使われています。実際、自分で作品を作る際にも花のモチーフを使いたいと考えることが多くありましたし、周りの学生と話していても作品に花を使いたいという人が多くいたのを覚えています。
今回、映画の美術として花を生けるにあたってまず、一体どんな芸術的魅力があるのかを考えてみました。
作品作りを学んでいた者の視点から芸術的魅力を考えてみると、色の表現の幅と密度の高さが挙げられます。
花は単体で様々な色を持ちます。一色であっても光沢や色の濃淡、模様などがどの花にも見られます。ただ一種類だけの造作であっても、この色の幅が作品の表現により深みを生み出してくれます。組み合わせ次第でもっと表現の幅が広がっていきますね!
また、色の幅に加えて、花びら一枚一枚の質感や、葉の葉脈、枝分かれしてさまざまな方向に咲くさま、個体によって同じ姿をしているものは無い造形など、自然が生み出す緻密な造形がとても魅力的に映ります。花は、どう頑張っても他のもので人工的な再現が不可能な造形なのです。密度が高いと、視界の情報量が多く感じます。密度が高い作品は一目見ただけで鑑賞者に迫力や繊細さを伝えることができます。「目に留まる作品」と言うのはいろんなものがありますが、花をたくさん用いた作品は上記の点から、第一印象から印象に残りやすく、もっと詳しく見てみよう、と鑑賞者の視点を近づけていくことが可能です。そうすることで、鑑賞者は作品に没入していきます。
また、作り物ではない自然の物であるという「本物」を用いた作品は、美しさや高級感を違和感なく表現することができます。
花を使った作品を人々が鑑賞する際、人々は一目見ただけで「これは花である」と認識することが可能です。また、花というものは「自然に美しく咲き、枯れていく儚い植物である。」という前提条件があります。これだけで花を用いた作品には命の短い儚さやその一瞬の輝きを感じさせることができます。このように、花一つに対して人々が生活している上で身についているこのような前提条件は、作品に利用した際、語らずして無意識に鑑賞者に説明することができるのです。
もちろん、花自体の持つ自然の美しさの魅力も、様々なアーティストが花をモチーフにする所以でしょう。
3.映画の美術として花を活けた感想
最初にお話ししたように、作品の大半を一から造形していた私にとって、「花」と言う形の決まったものだけで作ると言うことは、新しい経験です。
形の制限がある中で、どのようにしたらイメージ通りの造形になるのか、迫力のある造作になるのか、と考えながらその場で組み立てていく作業は難しくもあり、面白さも感じました。実際に花を生けてみると、普段店舗で行っている花のお手入れや花の組み方など、根本の扱いは全く同じでした。このような基礎的なことを教わっていたおかげで、入って間もない私でも、少しでも花を生ける作業を行うことができて嬉しかったです!
一方で、本物の生花を使っていることの大変さも多く感じました。屋外での生花の取り扱いは、店舗業務では気に留める機会の少ない点でした。ダメージが出やすいという普段の会話の中で教わったことを理解していながらも、初めて目の当たりにしたため、花の繊細さを実感いたしました。ただその中でも、ダメージの出やすいものと、出にくいものの差は、普段店舗にいらっしゃったお客様にご案内している持ちの良い花とそうではない花といった差と同じようで、様々なところで、普段の業務から知識が身についていることが実感できました。
実際に店舗でも、「この前紹介してくれたお花がまだ持っていて嬉しい!」「いろんな花の紹介をしてくれて、お店にも慣れてきたね」とお声がけしていただく機会も有り難いことに増えてきて、嬉しい限りですm(_ _)m
これからも、店舗業務をしっかりと丁寧に行い、自分のできることの幅を広げていきたいです!
また、今回戦車に花を生けている様子を見ていて感じたこともあります。それは、人工物との組み合わせの難しさです。大規模な戦車に対して、花というものはとても小さく感じます。その中でどれほどのボリュームがどこにあれば迫力のある画になるのか、遠くから見ても見劣りのしない花の生け方はどういったものなのか、、、たった少しの違いでもバランスの良さが全然違って見えるのだろうな、と考えながら撮影の様子を見ていました。
生花を使った大型作品だからこそ、大変だと思う点や自分が舞台の大道具を作るときに意識していたこととの違い、生物を扱うということの大変さを改めて実感いたしました。一方で、店舗業務・大型作品共に、生花を扱うことができたときに得られる芸術表現の幅の広がりは、演出を学んでいる私にとって大きな力になると今回の撮影で確信いたしました。
4.終わりに
花が花であるという利用の制限のある中で、「どこに」花があるのか、「なぜ」花があるのか、といった花の持つ前提条件を加味したデザインは、作品に深みを与えています。今回の作品の、花の持つ前提条件の「あたりまえ」を逆手に取った使い方は、花というもの自体の表現の可能性を広げる使い方だと考えます。そんな作品にスタッフとして携わることができてとっても嬉しいです!
映像の中でどのように映っているのか、私自身も、皆さまと同じように今回の作品の完成を楽しみに待ちたいと思います。
これまで学んできたことと、i-floristで今後も学び続けていくこと、両方の知識をもって私なりの作品作りができるよう精進していきたいです。