「花×映画」映画の中での花の役割【不思議な世界編】
皆さま、こんにちは!i-floristスタッフの鎌田です。
前回は花×映画【若草物語編】ということで、小説・若草物語を原作とした映画二本を、花に着目して比較しながら、ご紹介いたしました。
さて、今回は【不思議な世界編】ということで、不思議なことが起こる空想上の世界で「花」というモチーフはどのように使われているのか、ご紹介していきたいと思います!
今回ご紹介する作品は、「オズの魔法使い」と「不思議の国のアリス」です。
二作品とも生花は使われていませんが、「花」というモチーフの可能性がとっても広がる作品のためご紹介いたします!
今回もまた、前回とは違った、映画から学べるお花の選び方のご提案をいたしますので、合わせてお楽しみください♪
二作品ともとても有名な作品なので誰もが一度はこれらの作品のビジュアルや曲を見聞きしたことがあるのではないでしょうか?改めてあらすじからご紹介いたします。
1.オズの魔法使い(1939) あらすじ
2.不思議の国のアリス(1951) あらすじ
3.日常から不思議な世界へ
4.何かが起こる予兆としての花
5.映画から学ぶ、お花の選び方のご提案
5-1.ご提案その1・映画のような世界を作ってみる
5-2.ご提案その2・どういう効果を持たせたいか決めてみる
6.終わりに
1.オズの魔法使い(1939) あらすじ
<オズの魔法使い(1939) あらすじ>
カンザスに住む少女ドロシーが竜巻で魔法の国オズに飛ばされてしまい、元の世界に戻るために旅をします。旅の途中で、脳みそが欲しいカカシ、心が欲しいブリキの木こり、勇気が欲しいライオンという3人の仲間と出会い、みんなで「エメラルドシティ」に住む偉大な魔法使い「オズ」に願いを叶えてもらおうと冒険を続けます。悪い魔女との戦いをはじめとした数々の試練を乗り越えながら進んでいく冒険物語です。
2.不思議の国のアリス(1951) あらすじ
<不思議の国のアリス(1951) あらすじ>
好奇心旺盛な少女アリスが、不思議な世界「ワンダーランド」で冒険を繰り広げる物語です。
ある日、アリスは白いウサギが「急がなきゃ!」と慌てて走っているのを見かけ、興味を引かれて追いかけます。ウサギを追って穴に落ちたアリスは、不思議で奇妙なワンダーランドに迷い込みます。
不思議の国では、話す花や不思議なイモムシ、謎めいたチェシャ猫、奇妙なお茶会をするマッドハターたち、そして厳格で支配的なハートの女王など、ユニークなキャラクターたちと出会います。驚きと困惑の連続の中、アリスは家に帰ろうと奮闘しますが、不思議の国は予測できないことばかり。アリスの不思議な体験を通して、夢のような幻想的な世界が描かれたファンタジーアニメーション作品です。
3.日常から不思議な世界へ
二作品とも、お話の特徴として現実世界に住む主人公が不思議な世界に迷い込む、という特徴があります。
現実世界と不思議な世界、二つの世界の比較として、現実世界よりも不思議な世界の方が鮮やかに、華やかな色が使われています。そして、それを示す最大のポイントが「不思議な世界では多くの花を使っている」ということです。
映画において、不思議な世界の魅力を視覚的に引き立たせるために、豊かな色彩や美しい形を持つ植物は欠かせません。不思議な世界を舞台にした作品では、視聴者がその世界の美しさに魅了されることが期待されるため、植物や花がカラフルで多様に登場することで視覚的な豊かさが増し、作品全体の美術的価値を高めるのです。植物の持つ自然の力強さを利用しているのですね。また、不思議な世界を描くために、植物とは何か、という大前提を逆手に取った、現実ではあり得ない表現をすることがしばしばあります。
例えば、オズの魔法使いでは、オズの国の植物はすべて人工的に作られたセットのような植物です。しかし、植物の背が人間よりも高かったり、花畑がとっても広かったりと、その植物のスケールの大きさや、色の豊かさ、変わった形から、不思議な世界に来ているのだというどきどき、わくわくを感じることができます。色使いも原色の黄色、赤、青、緑といった目立つ色が使われており、元気で明るい雰囲気を持たせます。
不思議の国のアリスでは、森の中と、整えられた赤い薔薇の庭の二つのシーンで植物が出てきます。
森の中ではさまざまな「喋る花」や変な色のキノコなど、カラフルで変わった植物が登場します。花の形をしているというだけで、この喋る花にもそれぞれキャラクター性を持たせており、美しさだけでなく、花の持つ個性の豊かさを使って、この不思議の国の豊かさが表現されています。
ワンダーランド特有の奇妙なキャラクターとして描かれている喋る花々は、それぞれ個性的で、美しさも持ち合わせています。
薔薇は気品と自信を持った花たちの中でリーダー的な存在として描かれています。優雅で落ち着いていますが、アリスに少し皮肉めいたことを言う場面もあります。
また、白い薔薇は美しく気品のある、キラキラとした特別な存在のようにほかの花々とは分かれた一人の空間があるように描かれています。不思議の国では薔薇という存在自体が特別なものとして描かれていますね。
デイジーは明るくておしゃべりな性格をしています。アリスに対してとっても興味があるようで、親しみやすい無邪気な様子が見られます。
そのほかの花にもそれぞれ魅力的な個性があり、この個性はそれぞれの種類の花に対する印象がぴったり当てはまっているようで面白いです。
花自体にキャラクター性を持たせて描くことで、花の持つ視覚的豊かさとともに、キャラクターの豊かさも表現されています!
整えられた庭は、ハートの女王の庭であり、赤い薔薇の木が植えられています。アリスに出てくる花といえば真っ先にこの赤い薔薇を思い浮かべるという方も多いのではないでしょうか?ハートの女王はこの「赤い薔薇」にとても執着しており、赤い薔薇でないと受け付けません。庭師たちが白い薔薇を急いで赤く塗る様子は、このハートの女王の強い支配力や独占欲、完璧主義な性格を示しています。そのため、この世界で美しい赤い薔薇はただ美しさの演出のためだけにあるものではなく、ハートの女王の性格や立場を明確にするための道具として、また、不思議の国での支配構造を示す道具として存在しています。
赤い薔薇ひとつを取り上げても、その花の個性が作品の奥行きを無言で示しているようです。
4.何かが起こる予兆としての花
美しい花はしばしばその美しさとは裏腹の危険を予知していることもあります。うっとりしているといつの間にか危険に巻き込まれているような、映画ではそんな抑揚をつけるものとして、花が使われています。
オズの魔法使いで登場する、黄色いレンガの道の先に広がる赤いポピーの花畑。オズのお城をバックに、メインビジュアルとしても使われることの多いこのシーン。とても美しく印象に残るように演出されています。しかし、ここで起こるのは「試練」の1つです。
鮮やかな赤い花々が風に揺れる光景は、美しさとともに不思議で少し不気味な印象を与え、旅の途中にある危うさを示唆しています。また、赤という色は一般的に、警告を表す色でもあります。見た目の魅力と、それに隠れた魔法の力が観客にとっても魔法の国ならでは、の幻想的な危険を感じさせるシーンです。
不思議の国のアリスで登場するのは、ハートの女王の愛する赤の薔薇。またしても赤色ですね。女王が近づく場面では赤が一層強調され、緊張感が高まります。赤い薔薇は、アリスにとって危険や注意を喚起する象徴となり、女王の怒りが爆発するかもしれないという不安感、危機感を煽ります。
5.映画から学ぶ、お花の選び方のご提案
今回ご紹介した【不思議な世界】を通して、映画から取り入れられるお花の選び方をご提案いたします!
5-1.ご提案その1・映画のような世界を作ってみる
普段はあまり自宅に花は飾っていないなあ…という方も、これを機に飾ってみてはいかがでしょうか?また、普段から花を生けられている方も、いつもとは違った世界の花を生けてみるのはいかがでしょうか?
現実とは違った世界を描く際に、花が多く使われる、というご紹介をいたしました。不思議な世界に入り込んだ主人公たちのように、花の持つ美しさにぜひ魅了され見てください♪
当店では、珍しい花や、ボリュームのある花が多く入荷しています。日常であまり見ないような、ネイティブプランツや大きな花をお家に生けると、それだけでいつもと違う新鮮な気持ちになることでしょう。卓上の花瓶のサイズの世界だけでも、不思議な世界を演出したくなっちゃいますね!
5-2.ご提案その2・どういう効果を持たせたいか決めてみる
今回のブログでは、赤は警告の色である、というお話をさせていただきました。同時に、赤は情熱や愛情、強いエネルギーを表す色でもあります。このように色によってもたらす効果があるので、軽くご紹介いたします。
【色がもたらす効果】
ピンク・・・愛情、優しさ、可愛らしさ
オレンジ・・・活力、喜び、元気、積極性
黄色・・・明るさ、幸福、ひらめき、希望、警告
緑色・・・癒し、調和、フレッシュさ、生命力
青色・・・安定、平静、包容力、涼しさ、知的
紫色・・・高貴、創造性、洞察力、個性的
白色・・・純粋さ、清純さ、癒し、上品
などなど、組み合わせによっても花から得られる効果はさまざまです。
ひらめきが欲しいからこの黄色にしよう、創作意欲を掻き立てられる個性的な紫色の花を使おう、など、さまざまな効果に合わせてお花を選んでみるのも面白いです!
また、人によってこういった色に対するイメージには違いがあります。ぜひ自分に合った効果のあるお花を選んでみてください♪
6.終わりに
今回のブログでは、不思議な世界の花の使われ方に着目してご紹介いたしました!皆さまいかがでしたか?
不思議な世界では、現実世界の生花とは違った個性的な花も多く登場しますが、どれも植物であるという前提があってのものです。普段私たちの生活に身近に植物があるからこそ、現実であり得ないことが起きた時に不思議な世界だと伝わるという、トリックになっています。無意識のうちに、自然が私たちの近くにずっといるということがわかりますね。
花を使えば、映画の中の世界を気軽に日常に取り入れられます。まるで映画のワンシーンのような日常を、ぜひ送ってみてください♪
また、私ごとになりますが、少しでも花の芸術的魅力について知ってもらえていたら幸いです。
映画は、編集技術やC Gなどを利用してより素晴らしい映像を制作していくことが可能です。そんな中、弊社で行なっているような生の花を用いる映画美術を考えるにあたって、舞台作品のように芸術的に利用できる可能性があるということが、私はとても嬉しく思います。
弊社はCG技術に頼らず、生花を利用した美術を作ることができるので、映画の美術として、新たな可能性を見出せると考えています!
今後の弊社の活躍をお楽しみに!